スペインでの結婚と離婚に関する基礎知識

皆さまの中には、スペイン人または外国人とのご結婚を予定されている方、あるいは離婚の危機に直面している方もいらっしゃるかと思います。

今回は、スペインにおける結婚に関わる文化と、離婚の際に適用される法律や知っておくべきポイントについてご紹介します。

目次

スペイン人の恋愛と結婚観

スペイン人の恋愛観

個人の自由が尊重されているスペインでは、恋愛に対する価値観が多様です。恋人同士になる前にしばらく「お試し期間」のような交際を経るカップルも少なくありません。これは、正式に novio/a(恋人)として付き合う前に、お互いをよく理解するための自然なプロセスとされています。

また、近年では “relación abierta”(オープンリレーションシップ)という交際形態を選ぶカップルも見られます。これは、パートナーと恋人関係を続けながら、互いに合意の上で他の人とも関係を持つことを認めるスタイルです。もちろん、全ての人に当てはまるわけではありませんが、スペインでは「恋愛は個人の自由」という考えが強いため、社会の中でも、柔軟な関係のあり方に対して寛容な姿勢が見られます。

スペインにおける多様な結婚観

結婚も恋愛と同様に、「自分らしい選択」が重視され、一律の形にとらわれない傾向があります。

スペインでは、1978年の憲法制定までもともと離婚は認められていませんでした。その後、1981年に離婚法が施行され、正式に離婚が可能となりました。離婚が合法化されて以降は、結婚に対してより自由で柔軟な考え方が広がりつつあります。

事実婚・同性・晩婚も一般的

結婚をする前に、「交際期間が長い」カップルも珍しくありません。必ずしも7~8年という決まりがあるわけではありませんが、数年間の交際を経てから結婚に至るケースが多く見られます。

例えば、

  • 子どもを授かるタイミングで結婚する
  • 事実婚(pareja de hecho)として関係を続ける ※正式に役所での登録申請手続きが存在します。
  • 50代やそれ以降に結婚する

といった形も一般的です。

つまり、スペインでは「結婚=必ずしも若いうちにするもの」という考え方は薄れ、ライフスタイルや人生設計に合わせて柔軟に選択されているのが特徴です。

スペインの婚姻における財産制度と文化的背景

スペインでの財産分与

スペインでも日本と同じく役所(Registro Civil:戸籍登録所)で婚姻が成立します。しかし、異なる点は、婚姻に伴い財産制度を選択する必要があるということ。これは結婚生活や将来の離婚時に重要な意味を持っています。

法律上どのように財産を扱うかには、主に以下の2つの制度があります。

1. 共同財産制(Sociedad de gananciales)

「共同財産制」では、結婚後に夫婦が取得した財産はすべて共同の財産とみなされます。

伝統的にはこの制度を選ぶ夫婦が多く、家庭を「一つの共同体」として考えるカトリック文化や「結婚後はすべてを共有する」という価値観が背景にあります。特に地方や年配の世代では、この制度が自然な選択とされてきました。

2. 別産制(Separación de bienes)

「別産制」では、結婚前・結婚後を問わず、それぞれが得た財産は本人の所有とされます。

近年ではこちらを選ぶカップルも増えており、理由としては「互いの経済的な独立を尊重したい」「離婚時のトラブルを避けたい」といった考え方が挙げられます。特に都市部や若い世代、再婚カップルではよくある選択肢になりつつあります。

歴史的背景

フランコ独裁時代(1939–1975)には、女性の権利は制限され、家庭を守る以外の社会的役割を担うことが困難でした。しかし、民主化以降は法制度が整備され、女性の権利も拡大し、働く女性が増えました。現在では「自分の財産は自分で守る」という考え方を持つ人が多く、別産の婚前契約(separación de bienes)を選択する夫婦も少なくありません。

財産制度の契約

これらの制度の選択や変更は、公証人役場(Notario)での契約(capitulacionesmatrimoniales)によって行います。日本では見られない文化ですが、スペインでは結婚前に自分の財産や土地を守るためにこのような契約が結ばれます。

スペインにおける「子ども」と「結婚」の関係

スペインでの離婚問題_子供の親権

スペインでは、日本のように「子どもを授かったら結婚するのが当然」という価値観は必ずしも重視されてはいません。

これは、スペイン社会に根付いている「結婚=家族を作る条件ではない」という考え方に由来しています。結婚を選ぶかどうかは、カップル同士の価値観やライフスタイルによります。

子供の認知 – 養育費の目安は?

スペインでは、子どもが生まれた場合、たとえ両親が結婚していなくても、父親には子どもを認知する義務があります。そして認知がなされると、両親には親権や養育費に関する責任が発生します。

養育費(pensión de alimentos)は、裁判所が両親の収入や子どもの生活水準に基づいて算定します。一般的には最低でも子ども1人あたり月300ユーロ程度が目安とされますが、金額は親の収入状況によって変わります。

親の離婚と子供の権利

1981年の離婚法合法化以降、現在では離婚は珍しいものではなくなりました。裁判所での手続きも比較的スムーズになり、「合意離婚(mutuo acuerdo)」であれば、数か月で手続きが完了するケースも。

離婚の際に最も重視されるのは、「子どもの利益(interés superior del menor)」です。親権や養育費、住居の使用権などは、常に未成年の子どもが安心して暮らせることを最優先に決定されます。

結婚後に離婚の危機に直面した場合はどうする?

スペインでの離婚

スペインで離婚の危機に直面したら、財産や扶養料はどうなるのでしょうか。これは、子どもの有無や夫婦の職業・学歴・経済状況によってそれぞれ異なります。

なお、スペインでは離婚に際して慰謝料(精神的苦痛に対する金銭的補償)の制度や文化は、基本的に存在していません。

1. 財産分与について

前述したように、スペインでは結婚時に選択した財産制度(共同財産制/別産制)に基づいて財産分与が行われます。

共同財産制(Sociedad de gananciales)を選んでいる場合
結婚中に取得した財産はすべて夫婦で分けられます。

別産制(Separación de bienes)を選んでいる場合
結婚前後を問わず、各自の財産は本人に帰属します。そのため、相手の名義の住居に住んでいる場合でも、財産分与は基本的に認められません。

2. 扶養料(pensión compensatoria)について

離婚後に生活費の支払いが認められるかどうかは、配偶者の職業経験や学歴、経済的自立能力によって判断されます。

学歴や職業経験がある場合
裁判所は「経済的に自立できる」と判断し、原則として扶養料は認められません。

専業主婦(または主夫)として長年生活してきた場合
結婚期間や生活状況を考慮し、裁判官の判断によっては、一定期間の扶養料や補助的な支払いが認められる場合があります。

例えば、結婚期間が5~6年程度で、配偶者が専業主婦(または専業主夫)であった場合、裁判官の判断により1~2年間程度の扶養料が認められるケースがあります。その金額は、スペインで最低限の生活を維持できる水準を目安としつつ、最終的には相手方の収入状況や夫婦の生活レベルによって決定されます。実際には、収入が少ない側の必要最低限の支出を補う形で、月400~600ユーロ程度が認められるケースも報告されています。

3. 住居の使用権

離婚後の住居については、特に未成年の子どもがいない場合でも、経済的に弱い立場にある配偶者に対して1~2年間の住居使用権が認められることがあります。これは、新しい住居を探したり、仕事を見つけるための猶予期間として与えられるものです。

法律上、たとえ住居が夫名義であっても、夫が一方的に妻を追い出すことはできません。

弁護士への相談の重要性

スペインでの離婚 弁護士相談

離婚の進め方や裁判所の判断は、ケースによって大きく異なります。間違った行動を取ると不利益を被る可能性があるため、家庭法に精通した弁護士(abogadode familia)に相談することが重要です。

離婚時の注意点と合意書(Convenio)

もし離婚に際して「家からすぐに出て行ってほしい」と言われた場合には、裁判所の決定や口頭の約束に頼るのではなく、弁護士事務所で正式な合意書(Convenio Regulador)を作成し、双方が署名することを強くお勧めします。

また、スペインでは離婚後、家庭の維持費や食費以外の形で経済的なサポートを受けた場合、相手は離婚から5年以内であればその返還を法的に請求できる可能性があります。将来的にトラブルになることを避けるためには、こうした点も合意書に詳細を明記しておくことが望ましいでしょう。

さらに、経済的なサポートを「pensión compensatoria(扶養料)」として記載することは、法律的には正しいものの、税務上の取り扱いに注意が必要です。

支払う側
税務上の控除対象となります。

受け取る側
収入とみなされ、IRPF(所得税)の課税対象となります。

そのため、実務上は「pensión compensatoria(扶養料)」ではなく、「apoyo económico(経済的支援)」として記載することをお勧めします。この表現であれば、受け取る側が不要な税務負担を避けられます

子供がいる場合の離婚

スペインでの離婚 親権

1. 親権(patria potestad)

原則として共同親権(custodia compartida)が推奨されます。

ただし、実際の生活環境や子どもの年齢によっては、片方の親に単独親権(custodia exclusiva)が認められることもあります。

2. 子どもの養育費(pensión de alimentos)

未成年の子どもがいる場合、同居していない親は必ず養育費を支払う義務があります。

金額は子どもの年齢、生活に必要な費用(住居、教育、食費、医療など)、および両親の収入状況に基づいて裁判所が決定します。

一般的には、子ども1人あたり最低でも月300ユーロ程度が目安ですが、地域や収入によって変動します。

3. 住居の使用権(uso de la vivienda familiar)

子どもが未成年の場合、通常は子どもと同居する親に住居の使用権が与えられます。

たとえ住居が夫または妻の名義であっても、未成年の子どもを優先して保護するため、子どもと一緒に暮らす親がその家に住み続けることが可能です。

4. 扶養料(pensión compensatoria)

これは子どもではなく配偶者への補償ですが、経済的に大きな格差がある場合に認められることがあります。

ただし必ず支払われるわけではなく、裁判官の判断次第となります。

結婚や離婚の問題は、一人で悩まず相談を

スペイン人との離婚 結婚指輪

これから結婚を考えている方、そして離婚でつらい思いをされている方へ。

スペインの結婚や離婚は、日本に比べて制度が柔軟で、個人の自由や子どもの権利を何よりも大切にしているのが大きな特徴です。だからこそ、不安や戸惑いを感じる場面もあるかもしれません。

大切なのは、一人で抱え込まずに「制度や文化の違いを理解すること」、そして「必要に応じて専門家に相談すること」です。きちんと知識を持ち、信頼できる人とつながることで、必ず安心できる道が見えてきます。

結婚を迎える方には、新しい人生のスタートを心から応援しています。

そして離婚で悩んでいる方にも、どうかご自身の未来に希望を持ち、前へ進む力を取り戻していただきたいと願っています。

▼スペインでの結婚や離婚に関してお困りことやご相談がありましたら、スペイン現地のサポート会社「おまかせマドリード」にお気軽にお問い合わせください。サービス内容と料金については、以下の一覧表からご確認いただけます。

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